スキーをする上で基本ポジションとして語れることが多い背中の角度は、さまざまな斜面状況や動きに合わせた動的なポジションの取り方が重要です。
スネと背中の角度を揃えるという考えとは違う動的な基本ポジションを解説していきます。
子供の頃から言われていること
背中の角度を脛の角度と合わせるという言葉。
僕は小学校の頃、本格的にレーシングを始めた小学校5年生くらいから聞いていた言葉だと思います。
今でも雑誌やYouTubeでもよく耳にする言葉ですが、この動作をおこなったときに違和感を感じることはありませんか?
窮屈な基本ポジション
背中の角度を意識したときに感じること
レッスンでもそうですしレーシングチームの指導でもよく聞く言葉なので、きっと皆さんも一度きりではなく何度でも見聞きしたり、実際に動作としても行ったことがあると思います。
その時、どう思いましたか?
スキーの場合、ブーツという可動域の少ないものを履いた状態で動いていくスポーツですが、その中で脚の曲げ伸ばしを行なったときに、背中の角度を維持したまま脚の曲げ伸ばしができるでしょうか?結構窮屈ですよね。
すごく綺麗な緩斜面や中斜面を滑るだけであれば、背中の角度を維持したまま滑るというのはできなくもないと思います。でも、何か無駄な力や意識が使われているようで、自然じゃない感じがしませんか?
例えば他のスポーツで考えてみてください。テニスや野球、バスケットボール基本的な構えで見ると確かにそれらしい構えを作っていますが、動き出すとどのスポーツも繰り返し行う動作のなかに、違うポジションが出てきます。
スキーはそれなりに自由度の高いスポーツですよね?背中と脛の角度を揃えて滑ることが、本当に効果的で効率的なのでしょうか?
違和感から感じること
今回の言葉に関しては、誤解するというよりもそもそも「無理でしょ」というのが正直な意見です。
他のスポーツでも示した通り、基本の構えとして一番初めにリセットする構えとしてはあってもいいと思うのですが、背中と脛の角度を揃えたまま動いていくとなると、ちょっと無理がでてきますよね。
きっと同じことを思っている方もいるのではないでしょうか?
なるべく膝の上に肩がある状態のまま動くこれがオンラインスクールでお伝えしている考えです。
実際のレッスンで感じていたこと
レッスンで感じていた違和感
僕は19歳の頃からスキースクールに所属してレッスンをしていました。
レベルも年齢も問わず、4歳児のキッズレッスンから70歳以上の方のレッスンまで、そして上級者だけということは全くなく、スキーを一から始める方から大会に出るような方、たまにブロック技術委員という指導者に指導することもあります。
今はプライベートレッスンに絞っていますが、当時は修学旅行のレッスンもやっていましたので、考えてみるとレッスンをしてきた方は3000名を超えるのではないかと思います。ただ、僕は4年間スキーから離れていた時期があるので、もっと多いという方もいるとは思います。
そんな沢山のレッスンをする中で、やはり僕自身も周りから聞こえてくる言葉にどうしても納得できませんでした。だって実践しても無理ですし、しかも無理に実践しようとすると、後傾になってしまうこともあります。
こんなポジションで滑るのは筋トレではないかと思っていました。
背中の使い方はもっと柔軟であるべき
お伝えしたように、今まで沢山のレッスンを経験する中で、そしてオンラインスクールでレッスン動画をお届けしていく中で自分なりの基本ポジションを確立していきました。それも静的な基本ポジションではなく動的な基本ポジションです。
スキーはさまざまな状況の中でバランスをとりながら行なっていくスポーツです。動きのある中での動的なポジションの確立していなければうまくバランスをとりながら滑り続けることが難しく、無駄に筋力や神経を使い、疲れてしまうことになります。
オンラインスクールでお伝えしている動的な基本ポジション、膝の上に肩があるポジションはこれまで沢山の方をレッスンしてきた中で、よりリラックスした状態で自然な動きでバランスをとっていくことができるようになるということを確信を持ちました。
よりリラックスした状態というのは、背中を一枚の板のように使うのではなく、背骨を一つ一つ蛇腹のように独立させて柔らかく使うというイメージです。ピラティスやヨガをしている方は動きのイメージがしやすいかもしれませんね。
この背骨を蛇腹のように独立させて使うという動きを使いながら膝の上に肩があるポジションを維持しながら滑っていくので、背中が真っ直ぐになることもあれば丸くなっていくこともあります。
背中が丸まるというのは背中の角度と脛の角度を合わせようとすると、脛の角度とどこの角度が一緒になるの?と迷ってしまいますよね。
なので、オンラインスクールではそもそも背中と脛の角度を合わせるという考えになりません。
そして、背中をがっちり固めず、骨盤すらも固めすぎずに使うことは、スキーだけでなく体の健康を保つことにもつながります。
プロに聞いた理想と現実
過去にオンラインスクールのオフトレメニューを監修してくれていたPersonal Training Studio BUDDY 代表の榎本さんに話を聞いてみました。
トレーニング業界にはFMSという理論があるのですが、このFMSはトレーニングをする上でその人の身体能力を7つの基準で判断することで、最適なトレーニングの土台となる情報を得るというものです。
BUDDYでもこのFMSを取り入れているので、FMSに沿って考えた場合は、確かに背中の角度と脛の角度を合わせるというのが基本となるとのことでした。
でも、実際現場でやっていると、ほとんどの方が背中と脛の角度を揃えたポジションでスクワッドをするのは難しくて、つま先をガニ股のように開きつつ膝はつま先よりもちょっと内側に入るような形でスクワッドをしていくとやりやすいように感じているとのことでした。
前提条件として、トレーニングの場合は
- スキーブーツを履いていないから足首が柔軟に動く
- 止まったままやるのでつま先を開いて行なっても問題ない
- FMSの場合脚を曲げるのは腿が床と水平になるくらいまで
というのがあるので、スキーの場合硬く可動域の狭いスキーブーツを履きながらつま先の向きを左右揃えた状態で滑っていくので、この脛と背中の角度を合わせたポジションでは実際問題うまくポジションを維持することが難しそうです。
確かにFMSという理論に当てはめるのであれば、背中と脛の角度を合わせたまま動いていくというのが理想と言われています。
ですが、スキーではもっと脚を曲げることもありますし、ブーツという道具を使いながら斜度のあるところを滑っていくスポーツなので、榎本さん的にもスキーの場合必ずしも当てはめる必要はないのかもね〜。とのことでした。
この話を聞いて、皆さんはどう思いますか?
これまでオンラインスクールでお話ししてきているポジションですが、実践してきた皆さんはどうでしょう?
僕が現場のレッスンでお伝えしてきた方は、僕が見ている限り安定したポジションを手に入れていますが、オンライン上でお伝えしている方は、全ての方の意見や感想を知ることはできないので、ぜひオンラインスクールのコメント欄で教えてください。
他の方への参考にもなると思います。
正しいポジションを試す
膝の上に肩があるポジションを実践する
オンラインスクールではこの膝の上に肩があるポジションという考え方を基本としているので、メソッドとしてお伝えしている基本の動画の一番最初に出てきます。
動画としては、前回の外足の間違いで紹介した動画と同じ動画で解説していますので、改めて確認してみてください。
スキーの真ん中に乗り続けられるポジションを意識する
ちょっと話は違いますが、YouTubeのワンポイントレッスン動画で過去に背骨を蛇腹のように一つ一つ使って滑るということを解説しています。
今回の話につながる動きですので、是非確認してみてください。
この感覚を掴めると、より柔らかく滑らかなポジション作りができるようになります。
見た目的には言われないとわからないくらいの変化ですが、でも大事な意識です。
まとめ
- 無理に背中と脛の角度を合わせようとすると後傾になることもある
- 背骨を一つ一つ蛇腹のように使って滑ることは健康的にも大事なこと
- トレーナー的な目線で見てもスキーの場合は無理に背中と脛の角度を合わせる必要もないと感じている
- なるべく膝の上に肩がある状態を維持して動く、滑る
レッスンを受けると一言目にはでてくる背中と脛の角度を合わせましょうという言葉ですが、今回の話を聞いて理解度が増したと思います。
目から鱗が落ちましたよ
オンラインスクールに参加している方に背中の角度の話をすると、私ずっとスネと背中の角度は一緒にするべきだと教わって来たので、それをずっとやってました。でもスネと背中の角度を一緒にすることを疑ってはいませんでしたが、いつまで経っても後傾と言われてしまったり、お尻が落ちてるって言われてたんです。
それが、今回スネの角度と背中の角度を合わせようとするのではなく、膝の上に頭があるポジションを意識したら、なんて滑りやすいんだろう!と思いました!
スキーの真ん中にしっかり乗ってセンターポジションが作れている感覚が強くなりましたし、脚の曲げ伸ばしをしても重心が前後にぶれることなく不整地やコブでもすごく滑りやすくなりました!
本当に目から鱗が落ちましたよ!とコメントいただきました。
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